【山形】 EO North Japan 山形IBピッチ大会 レポート

2022.01.31

EO North Japan 山形IBピッチ大会は、2022年1月28日(金)午後7時から酒田市にあるインキュベーション施設LIGHTHOUSEにてEONJ主催 Yamagata Innovation Base共催で開催されました。

インキュベーション施設LIGHTHOUSE

EO North Japanでは「東北 Innovation Base プログラム」の一環として東北にゆかりのある起業家、起業または準備中の方を対象に「NexT10(ネクスト10) powered by EO North Japan」と題したピッチ大会を東北各県で開催しています。
2021年10月15日の宮城県予選(プレ大会)時から始まり、11月は福島県、12月は岩手県と各県会場でピッチ大会を実施して参りました。各会場ともに想像を超える熱量とロックな感性を持った起業家たちが激戦を繰り広げて参りましたが、その熱量冷めやらぬ状況の中、新年一発目の開催がこの山形県大会になります。

  • 「人生かけてやりたいこと」は何ですか?
  • それは、なぜやりたいのですか?
  • そのために、これまでどんなことをして来ましたか?

この3つの内容で各登壇者が4分間という制限時間内でピッチを行い、起業マインドの大小、すなわち起業家が「ロックかどうか」を現役の起業家でもある審査員によって評価していく「NexT10」。

山形県大会は、天気はあいにくの雪という状況でしたが、アメリカ西海岸のガレージのロックな雰囲気を持ったインキュベーション施設LIGHTHOUSEにおいて、会場はほぼ満席。
こだわったステージングの中、ロックなオープニングムービーとQueenの「We Will Rock You」をオープニングソングに熱〜い空気の中で始まりました。

YIBのオープニング

YIBのピッチコンテストには以下の方々が登壇しました。

株式会社AddWill 武田 悠さん

AddWill 武田さん

今までの最高の想い出が大学の卒業旅行で行った富士急ハイランドという武田さん。

自分自身がその時体験したアトラクションの楽しさ、楽しい中での疲れを癒してくれた温泉。同じような「最高の想い出」を作る場所、その名も「たけだランド」を作り出したいとの熱い思いを語っていただきました。

体験型のアトラクションから温泉・サウナ、整った後の食事とビール、そして食事とお酒を堪能した後にはプロジェクションマッピングを活用した探検型のホテル。ゆっくりとした語り口で会場の想像力を盛り上げていきます。

現在はまだプロジェクションマッピングや空間の使い方を勉強中で、道は半ばですが自分が得た幸せをみんなにも必ず届けたいという武田さん。
ワクワクと引き込まれるピッチで「行ってみたい!」と思わせてくれました。

ドレスサロンジューン 本間もも子さん

本間さん

「映画の主人公になってみたいと思ったことはないですか?」
こんな問いかけから始まった本間さんのピッチ。

本間さんは酒田市の貸衣装店に10年ほど勤めていたそうですが、新型コロナウイルス感染症の影響でキャンセルが続出する状況になってしまったそうです。
そんな厳しい環境ではありますが、「ウェディングの夢を途切れさせたくない」という思いから、勤めていた貸衣装店の在庫を全て引き受け、新たに衣装のレンタルと撮影スタジオを融合した「ドレスサロンジューン」を本間さん自身でオープンさせました。

ドレスサロンジューンでは衣装からヘアメイク、撮影まで行っていますが、大切な人との大切な瞬間を残したいというお客様の気持ちはコロナ渦でより一層強くなってきていることを感じているとのこと。
確かに家族で遠出して遊びに行ったりという機会が減ってきてしまっている現在。そのような気持ちは確かに自分にもあるな、と感じました。

ウェディングフォトでは、特に地元の自然の風景と調和した、まさに物語の扉絵のような写真をいくつもご紹介いただきました。

ウィディングフォト


コロナ渦で海外などでのウェディングが難しい中、地元の風景を生かして想い出に残る一瞬を撮影する。より活動を広げていってほしいと思います。

BAQSAN株式会社 高橋海歩さん

高橋さん

「日本の未来は危うい」という高橋海歩さん。高橋海歩さんは今回唯一の10代の登壇者です。

豊かな日本というのはもはや幻想で、後の世代のためにクリエイティブに日本を豊かにしたいと想いを語っていただきました。
マンガやアニメといった知られたコンテンツだけではなく、料理や農業、建築といったものも含めてクリエイティブ。山形にも魅力的なコンテンツはある。でも知られていないことがもったいない。
知られていないクリエイティブを世の中に広め、価値を創造していくのが自分の使命と思っていると語る高橋海歩さん。

これをやり遂げることで誰かを幸せにする。そしてそれを生きた証として幸せに死にたい、とロックな想いを語っていただきました。

EnoGG株式会社 高橋駿斗さん

高橋さん

「0.7%」という数字。これは日本で絵だけで食べていける人の割合だそうです。
絵を専攻して学んでいた幼馴染から「描くことは好きだけど、絵で食べていくのは厳しいから、就職するんだよね。」と言われたという高橋駿斗さん。
確かに美大芸大に入ってもその後食べていけるようになるための壁が高く、美術・音楽など芸術関連は一生食べていくには難しいイメージがあります。展覧会などで受賞してからがまだスタートラインとなっているそうです。

そこで高橋さんは審査員が望むものではなく、「お客様が求めているアート」を提供するためにEnoGG株式会社を立ち上げたそうです。アーティストのセンスと技術をそれを求めている企業とマッチングを皮切りに、経営理念のキービジュアル化やペットアート事業、無機質なエレベータをアートに変えるなど様々な事業の展開を今後考えています。

アーティストが食べられる環境を作り、美大・芸大生の受け皿になっていきたいという高橋さん。ぜひ今後日本のアートの力を世界に広めていってほしいと思います。

合同会社dano 伊藤 大貴さん

伊藤さん

伊藤さんは山形から就職で東京へ、そしてそこでデジタルマーケティングを学び、Uターンで山形に戻ってきたそうです。
伊藤さんの想いの中心にあるのは「ふるさとがなくなるかもしれない」という考え。村の合併や震災、そして地方に共通の悩みである「仕事がない」こと。
そこから合同会社danoは「10年後の仲間を作る。100年後に念いをつむぐ」をビジョンとして、未来を一緒に考えることのできる仲間を増やしていき、魅力的な仕事を創り出し、ふるさとをいつまでも残していきたいと活動しています。

デジタルマーケティングは言い換えると関係づくり。地域の企業と成果が出るまで伴走して、その企業を成長させ更には自分たちも成長していきたいという伊藤さん。
同じ地方で企業の支援を行っている立場としてとても共感しました。

インキュベーションポート山形株式会社 阿部 公一さん

阿部さん

「誰もがやりたいことに熱中し、夢を実現できる世界」これを人生をかけてやっていきたいという阿部さん。

阿部さんの育った家庭は親からの制限が多く、子供の頃は「人生は牢獄」とまで思っていたとのこと。
大学に入ってようやく自由になり、様々な人と関わりいろいろなことにチャレンジしていく中で、世の中に自分たちを応援してくれる人の多さに衝撃を受けたそう。

子供たちに自分がやりたいことを見つける場所を提供したいと立ち上げたインキュベーションポート山形。子供たちに対してアフタースクールでの探索学習などを行いながら、学生や若者に対してはやりたいことを実現する場を提供し、新規事業支援を行っています。

学生が作り出した新規事業としては米を使ったグミ「米Time」や地元の伝統工芸を活用した事業などを展開しているそう。(米を使ったグミ、どんな味か食べてみたいです(笑))

高齢化社会と言われ、今後子供が大人を支える構図に疑問を持っている阿部さん。阿部さんの語るとおり、多くの大人が子供の夢の実現をサポートすることで、子供社会が育成され、結果的に将来の日本が豊かになっていくと思います。
山形だけでなく、活動を全国に広げ、子供が夢を実現できる社会を作るサポートをしていってほしいと思います。

A-frame Japan株式会社 新川 晋悟さん

新川さん

「A-Frame」。聞き慣れない言葉でしたが、大きな急勾配の三角の屋根を持つ家のことだそうです。

新川さんは元々、景色の良いところに自分で家を建てたい、そう思っていたとのこと。そこで形を追求して至ったのが三角(A)の形状が特徴的なA-Frameで作られた家。このA-Frameの家は構造上、柱や梁が不要なため、大きな開口部が作れ、建物の中から風景を見ると、まるで景色が切り取られたアートのように見えるそうです。

新川さんはこう語ります。「好きな景色を楽しむことは、景色を守ることに繋がる」。確かに大切に思っているものは当然守らなければと思います。
そこで、今後は全国の絶景地を買取り、宿泊施設を建て、それを日本だけでなく世界に発信していきたいとのこと。

かけがえのない自然を守る、そしてそれを後世に残す。一番の課題が、一緒にA-Frameを建てる仲間(現場監督・設計士・大工)がまだいない!とのことでしたので、この記事を見た方でお知り合いにいましたら、ぜひ紹介をお願いします!

株式会社ローカルインキュベート 末永 玲於さん

末永さん

「53%」
この数字は、Z世代の地方移住に対するポジティブな感情の割合とのことです。

まだ現役の慶大生の末永さんは、ありのままに生きられ、チャレンジを支えてくれる環境に魅力を感じ、村山市に移住し、起業をしたとのこと。
実際に地方で起業するには「住環境」「仕事」「チャレンジへのハードル」を課題として感じた末永さんでしたが、この課題をクリアすることでZ世代をより多く地方に呼び込むことができるのではないかと考えたそうです。

そこで現在取り組んでいるのが、地方に対するハードルを下げ、ともに挑戦できる人を繋ぐためのHUBとしてのシェアハウス事業。

元々は「たまたま」村山市へ行き来するようになったということですが、その「たまたま」つながった仲間をもっと広げ、村山市だけでなく広く地方を盛り上げていってほしいです。

Oral care salon Lycka 前田 奈美さん

前田さん

子供の頃は歯医者が嫌いだったけど、可愛い歯科衛生士さんとイケメンの歯医者さんが輝いて見えて、歯医者嫌いを克服できたという前田さん。

今では歯科衛生士として独立し、虫歯を治すのではなく、口内の環境を守り、健康を維持するためのサロン「Oral care salon Lycka」を開業しました。

日本は先進各国に比べ、歯のメンテナンス率が低いそうです。原因の一つとしては歯科衛生士のステイタスが海外に比べて低く、離職率が高いなどといったところがあるとのこと。

そこで、前田さんは歯科衛生士のステイタスを向上させ、予防歯科のあり方を変革する、そして口内環境から健康な生活をサポートしていくことを人生をかけて行っていきたいと語っています。
実際にOral care salon Lyckaでは、「歯の治療」ではなく、「健康になりたい」を入り口にスウェーデンの予防歯科を参考にしたデンタルサロンと歯科衛生士の教育の2本柱で運営しているとのことです。

予防歯科が口内の健康を守り、それが高齢者の健康を守り、持続可能な世界に繋がる。
この取り組み、ぜひ全国に広がっていってほしいです。

株式会社hyoi 渡邉 輝さん

渡邉さん

渡邉さんは3年ほど前に今回の会場でもあるLIGHTHOUSEの前あたりで倒れて、救急車で運ばれた経験があるそうです。
その時の経験で忘れられないのが、倒れた時に手を握られている感触。「あったかい」と感じたそう。

コロナ渦の中でなかなかリアルでは会えず、「そのうちリアルで会いたいね」という言葉はよく聞きますし、自分も言います。やはり、オンラインではなく、リアルで会うことで人は安心するのは確かだと思います。

渡邉さんはそんなリアルで会うことができない(寂しさを抱えている)中で、ホログラムでみんなを呼ぶオンラインサービス「JUMP」を立ち上げようとしています。
渡邉さんはその中で必ず相手に触れられるようにしたい、遠くの大切な人に手が届くようにしたいと語っています。

言葉や映像だけのコミュニケーションだと、渡邉さんが感じた「あたたかさ」はなかなか感じることができません。渡邉さんは「JUMP」を人と人との距離をゼロにできるサービスにしていきたい、と考えています。

地方移住の壁の一つに今まで身近だった人とのコミュニケーションもあると思います。ぜひ距離をゼロにするこのサービスを現実にして、どこにいても誰とでも近くにいられる世界を実現してほしいと思います。

株式会社UPSTART 森屋 稔洋さん

森屋さん

アウトドアブランド「COLONISTA」を展開している森屋さん。

12年間美容関連に携わり、その後ウェブ広告代理店を立ち上げ、金銭的には成功を収めたそうですが、「お金を稼ぐ」だけがモチベーションでやってきて、ふと周りを見てみると自分達だけが儲けて、地元の人たちや子どもたちの未来に対して何もしていないことに気づいたそうです。

地元のこのような状況を変えていくのに必要なのは、情報のスピードアップと行動の後押しと考え、人生をかけて「世界を目指せるモノづくりヒューマンハブ」を作っていきたいと語る森屋さん。
様々な人の情報(スキル)を繋ぎ、行動を後押ししていき、幸せの連鎖を作り出していきたいとのこと。

地方だからこそできるヒューマンハブをより広げていっていただき、山形だからこそ、東北だからこそのビジネスを今後も展開していってほしいと思います。

結果発表

11名の方のピッチが終わり、いよいよ審査、そして結果発表です。

最後に(株)GCストーリー 代表取締役社長 西坂 勇人さんからの講評がありました。
支え合う仲間がいるからこそクオリティーの高いピッチが実現できたと思う、との言葉が印象に残りました。

講評

そして審査結果は。。。

A-frame Japan株式会社 新川さんが優勝!

優勝した新川さん

新川さん、おめでとうございます!

最後に

最後はみんなで記念撮影。

YIBでの記念撮影

新型コロナウイルス対策のため、残念ながら懇親会はありませんでしたが、この後は皆さんで名刺交換タイム。

外は気温マイナスで雪&道路は凍結でしたが、2時間のピッチは本当に熱く、刺激を受けられるものでした。
次回のEO North Japan NexT10ピッチ大会は、2月27日(日)青森で開催予定です。

© ENTREPRENEURS' ORGANIZATION NORTH JAPAN